建築法規は、建物の安全性や快適性、環境への配慮を目的に定められた法律や規則の総称です。
これには、建築基準法や消防法、都市計画法、省エネルギー基準などが含まれます。
これらの法規は社会の変化や技術の進歩に応じて定期的に改正され、
住宅設計にも大きな影響を与えます。
ここでは、建築法規の改正が住宅設計に与える主な影響について解説します。
1. 耐震基準の強化による設計の変化
日本は地震が多発する国であり、これに対応するため建築基準法の耐震基準は
たびたび見直されてきました。
特に1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災を契機に、耐震性能が強化されました。
設計への影響
- 構造設計の厳格化: 耐震等級が引き上げられると、住宅設計時に使用する構造材(鉄筋コンクリートや耐力壁など)の強度が求められます。
設計の自由度が制限され、コストも増加する可能性があります。 - 住宅性能表示制度の導入: 耐震等級は1~3のランクに分けられ、
住宅性能表示制度を通して確認できます。
設計者は、購入者にとって魅力的な「耐震等級3」の住宅を提供するため、
構造的な工夫が必要になります。 - 基礎工事の変更: 地盤改良や基礎の設計変更が求められる場合もあります。
- 地盤調査の重要性が増し、設計の初期段階での費用がかさむ可能性があります。
2. 省エネ基準の改正によるエコ設計の推進

温暖化対策として、住宅の省エネ基準は改正が進んでいます。
2021年の法改正では、すべての新築住宅に省エネ基準の適合義務化が導入され、
住宅のエネルギー効率向上が求められています。
設計への影響
- 断熱性能の向上: 外壁、窓、屋根などの断熱性能を高める必要があり、
窓ガラスの複層ガラス化や、断熱材の強化が必須となります。
これにより、設計の自由度がやや制限される一方で、
居住者の光熱費削減につながるメリットもあります。 - 設備の高効率化: 住宅設計時に、太陽光発電システムや高効率の給湯器、
LED照明の導入が求められます。
これにより、設備設計の工程が増え、設計者は設備業者と密に連携する必要があります。 - エネルギー消費性能の評価義務: 「建築物省エネ法」に基づき、エネルギー消費性能の評価が義務化されています。
設計段階でのシミュレーションが必要になり、専用ソフトを使った性能計算が求められます。
3. 防火規制の見直しによる材料と仕様の変化
住宅が密集する都市部では、防火地域や準防火地域が指定されており、
建物の外壁や窓に防火性能が求められます。
これらの基準は火災リスクの変化や災害の経験を踏まえ、改正が行われることがあります。
設計への影響
- 建材の選定: 防火性のある外壁材(サイディングボードなど)の使用が求められ、建材の選択肢が限られます。
防火ガラスや耐火ドアの導入も必要になる場合があります。 - 開口部の制限: 防火地域では、窓の大きさや配置が制限されるため、採光計画に工夫が必要です。開放的な大きな窓を取り入れたい場合は、
防火ガラスやシャッター付き窓を採用する必要があります。 - 建築コストの増加: 防火仕様の建材は通常の建材よりも高額なため、
建築コストが上昇する傾向にあります。
4. バリアフリー基準の導入によるユニバーサルデザインの普及

高齢化が進む中、バリアフリー基準の適用範囲の拡大が行われています。
高齢者や障害者が安心して暮らせる住宅の設計が重視されています。
設計への影響
- 段差の解消: 玄関や室内の段差をなくす設計が求められます。
スロープの設置や、フラットな床面の確保が標準化されています。 - 手すりの設置: トイレや浴室などの水回りに手すりを設置する必要があり、
設計の自由度が若干低下します。 - ドアの設計変更: 従来の開き戸から引き戸への変更が求められるケースもあります。
特に、車椅子の利用を考慮した場合、開口幅を確保するための設計が求められます。
5. 自然災害リスクへの対応(ハザードマップの導入)
地震だけでなく、水害や土砂災害のリスクに対応した設計が求められています。
これにより、住宅の立地選定や設計が大きく変わる可能性があります。
設計への影響
- 浸水対策の強化: 浸水リスクが高いエリアでは、1階部分の床の高さを高くする「かさ上げ設計」が必要です。地盤のかさ上げ工事や、避難ルートの確保が重要な課題となります。
- 水害に強い設備の導入: 防水扉や水密シートの導入が求められます。
これにより、設計の自由度が減る一方で、居住者の安全性が向上します。 - ハザードマップの考慮: 近年、土地購入時にハザードマップの確認が必須化されています。
特定のリスクがある土地では、設計時に地盤強化や浸水対策が必要となります。
まとめ

建築法規の改正は、住宅設計に大きな影響を与えます。
耐震基準の強化に伴う構造設計の見直し、省エネ基準の適合義務化によるエコ設計の導入、
バリアフリー基準の拡大など、設計者に求められる技術や知識は多岐にわたります。
また、自然災害リスクに対応する設計も求められ、
住宅設計は「安全性」「快適性」「環境配慮」の観点から進化を遂げています。
法改正に迅速に対応するためには、設計者が常に最新の法令情報を把握することが重要です。
設計者と建築主が連携し、資産価値の高い住宅を設計するために、
今後も法改正の動向を注視する必要があるでしょう。
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